思索と創作の城

書斎・書庫・応接室展示

「思索と創作の城」は、平成四年八月四日、松本清張が逝ったその時の形で、松本清張が確かに在ったその空間を切り取り、生誕の地に移したものである。
昭和三十年代から作家が住んだこの家は、東京の西郊杉並の高井戸に位置する。辺りは武蔵野の自然が残る閑静な住宅街で、家のすぐ横を渋谷と吉祥寺を結ぶ井の頭線が走る。始発から最終まで走る電車の音と振動が、毎日一定のリズムをもってそこまで届く。
独り「城」に閉じこもり、昼夜を分かたず 思索と創作に没頭した清張は、人々の動く時間と静止する時間、過ぎゆく日暦をこの電車の走る音と振動で操っていたのかも知れない。
一階は玄関を入って右が応接室で、その後ろに、応接室とは直接には繋がらない書庫がある。
二階は書斎、書庫、資料室からなり、二階書庫からは、階段で一階の書庫へ繋がる。
二階建の書庫は、倦むことを知らない思索と創作のための書物によって増殖に増殖(増改築)を重ね、多くの書架で区切られたその空間は、あたかも迷路のようである。

応接室
応接室

応接室は、松本清張が外部と接触するいわば清張作品流通の最前線であった。

書斎
書斎
書庫
書庫

書庫にある約2万3千冊の蔵書は、「調べて書く」という清張の創作の源を感じさせる。

[愛用のメガネ]
展示室2